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重症脳損傷後の意識回復では脳幹アミノ酸代謝が活発になる ―意識障害患者における新たな脳代謝指標の可能性―

国立大学法人千葉大学
 千葉大学大学院医学研究院(自動車事故対策機構千葉療護センター診療部長)の八巻智洋特任助教、同大同院の樋口佳則教授らの研究チームは、重症脳損傷後の意識障害(disorders of consciousness: DoC)(注1)患者における意識回復の仕組みを検討するため、代謝等を画像として確認する検査である「PET検査」を用いた脳代謝の縦断的研究を行いました。
 その結果、意識状態が改善した患者では、脳幹(注2)におけるアミノ酸代謝(メチオニン集積)の亢進が認められ、その後の脳全体の糖代謝の改善とも関連していました。従来重視されてきた糖代謝PET(FDG-PET)(注3)に加え、アミノ酸代謝PET(11C-メチオニンPET:MET-PET)(注4)も、意識回復を評価する新たな指標となる可能性が示されました。
 本研究成果は、2026年8月5日に米国神経学会誌Neurologyにオンライン掲載されました。
 (論文はこちら:10.1212/WNL.0000000000218419)

 
 図:本研究で行ったMET-PETおよびFDG-PETの測定結果

■研究の背景 
 脳は大量のエネルギーを必要とする臓器であり、その活動は主に糖代謝によって支えられていると考えられてきました。そのため、脳の糖代謝を評価するFDG-PETは、DoCにおける脳活動の残存を調べる指標として研究されてきました。
 一方、脳のアミノ酸代謝と意識回復との関係はこれまで十分に検討されていませんでした。本研究では、DoC患者を対象に、FDG-PETとMET-PETを縦断的に解析し、意識状態の変化との関連を検討しました。

■研究成果のポイント
● DoC患者を対象に約3年間経過を追跡することで、FDG-PETとMET-PETを縦断的に評価しました(図)。
● 意識状態が改善した患者では、脳幹におけるメチオニン集積の亢進がみられ、その後の脳全体の糖代謝の改善とも関連していました。
● 従来重視されてきた糖代謝に加え、アミノ酸代謝も意識回復過程に関与している可能性が示されました。
● MET-PETは、DoC患者の回復可能性評価に資する新たな画像バイオマーカー(注5)となる可能性があり、今後の新たな治療法開発につながることが期待されます。

■今後の展望(研究者コメント)
 これまでDoCの評価では、主に脳の糖代謝に注目されてきました。しかし今回の研究から、アミノ酸代謝も意識回復と関連する可能性が示されました。脳代謝を多面的に評価することで、DoC患者ごとの回復可能性をより深く理解できるかもしれません。一方、本研究は単施設での探索的研究であり、今後は基礎研究や多施設研究による、さらなる検証が期待されます。


■用語解説
注1)意識障害(disorders of consciousness: DoC):重症脳損傷後に、覚醒していても周囲への反応や意思疎通が著しく低下した状態の総称。
注2)脳幹:呼吸や覚醒など生命維持や意識に重要な役割を担う脳の深部構造。
注3)糖代謝PET(FDG-PET):ブドウ糖に似た薬剤を用いて、脳の糖代謝(エネルギー消費)を画像化する検査。
注4)アミノ酸代謝PET(11C-メチオニンPET:MET-PET):アミノ酸の一種である11C-メチオニンを用いて、脳のアミノ酸代謝を画像化する検査。
注5)画像バイオマーカー:医療画像(MRI、CT、PET、超音波など)から得られる情報をもとに、病気の状態や進行、治療効果などを客観的に評価する指標のこと。

■論文情報
タイトル:Glucose and methionine metabolism in disorders of consciousness after brain injury: an exploratory longitudinal PET study
著者:Tomohiro Yamaki, Nobuo Oka, Yoshinori Higuchi, Daisuke Ito, Shigeki Kobayashi
雑誌名:Neurology
DOI:10.1212/WNL.0000000000218419
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