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【五輪コラム】氷は軟らかい?重い?硬い? 感触探るスピードスケート選手

2022/2/9 19:09 (2022/2/9 20:18更新)
 国家スピードスケート館で初練習する高木美帆(中央)ら日本代表=1月31日、北京(共同) 拡大する

国家スピードスケート館で初練習する高木美帆(中央)ら日本代表=1月31日、北京(共同)

 「氷が軟らかい」。北京冬季五輪開幕前の1月29日、スピードスケート会場で初めて取材したところ、こんな声が次々と耳に入った。5種目挑戦の高木美帆(日体大職)ら日本勢はまだ北京に入る前。既に現地で調整していた海外の選手やコーチに聞いて回ると、「ソフト」という言葉ばかり聞いた。

 素人の筆者には氷の硬さの違いは全く分からないが、スケーターにとっては氷の質は重要だ。ブレード(刃)は、フィギュアスケートのものよりはるかに薄く、厚さ約1ミリ。素人にとってはまっすぐ立つことさえ難しい。これを取り付けたスケート靴を履いた選手は、時速60キロにも達するスピードで疾走し、カーブでは遠心力に飛ばされないようこらえながら加速する。

 誰が見ても難しいと分かるフィギュアのジャンプのように派手さはなく、高木美らは一見、簡単そうに滑っているように見える。しかし、凍結した路面で包丁を足に付け、自動車並みの速度で進むことを想像していただきたい。カーブの半径は内側のレーンで原則26メートル。いわゆるヘアピンカーブ並みだ。極めて難易度の高い、繊細な競技だろう。

 だからこそ、選手は氷の状態に敏感だ。リンクによって質はさまざまで、会場の温度、氷の温度、氷のもととなる水の質や整氷技術によって差が出るという。

 滑りへの影響についてはさまざまな見方、感じ方がある。氷が軟らかいと刃にかみやすく、1ストロークにパワーを要するため、体力を消耗するとの意見がある一方で、硬いほうが氷からの反力が強いため疲労度も大きいという話も聞いたことがある。当然、選手によって好みがあり、それぞれの滑り方との相性もある。

 中国では従来、北京ではなくさらに寒冷な北東部のハルビンや長春といった都市でスピードの国際大会が開かれてきた。これら中国のリンクはいわゆる「重馬場」とされ、タイムが出にくい傾向があった。選手からは「重い」「軟らかい」「もろい」という表現を多く聞いた。

 今大会のリンクは北京五輪のために新たに造られ、主要国際大会を開くことのないまま、五輪を迎えた。世界のトップ選手のほとんどが初めて滑るリンクだ。1月31日、会場で初めて練習した高木美は氷について「今までの中国のリンクをイメージしていたが、思ったより違和感がなかった。けっこう大事なことだと思っていた」と語った。他の日本勢からは「軟らかい」という印象のほか、正反対の「硬い」と表現する選手も。「重い」「滑りやすい」などの受け止めがあった。

 感覚を研ぎ澄ませている選手の言葉はさまざまで、同じ氷に関してもこうして正反対の表現が出てくることも珍しいことではない。今回も、ある選手は「長距離に向いている氷」と言い、別の選手は「長距離にはちょっときついかも」と言う。

 ここまでの競技結果を見ると、軽やかにリズムや技術で進むタイプでも、パワフルに氷を押す滑りの選手でも、速い選手もいれば、不本意な結果に終わっている選手もいる。どういう選手に有利かということを論じるのは難しく、氷の特徴を見極めた上で対応し、持ち味を出せるかどうかという当然の話に帰着してしまう。小平奈緒(相沢病院)が「氷と仲良くする」「氷と対話する」などの表現を用いるように、どの選手も感触を丁寧に探り、自分の滑りを発揮するすべを追求しているはずだ。

 ここまで、氷の状態を言い訳にする日本の選手は誰一人いない。足元に関わる大切な要素だけに、思うような結果が出なかった選手は特に、文句の一つくらい言いたくなりそうだが、黙々と氷に向き合う姿には敬意を表すばかりである。(共同通信・菊浦佑介)

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